MHB2025研究大会 参加報告

8/15~16に母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会2025年度大会に参加しました。

母語・継承語・バイリンガル教育は、多文化共生社会を考える上で欠かせないテーマであり、当協会としても大きな関心を寄せています。

本大会への参加は初めてでしたが、新しい学びや気づきが多く、とても充実した時間となりました。ここでは、聴講した講演について、私なりの理解に基づき簡単にご紹介します。


8/15 午前

午前中は3つの発表を聴き、特に中国・延辺の朝鮮族に関する報告が印象的でした。

延辺の朝鮮族は家庭では朝鮮語、学校では中国語を使う環境の中で、若者は言語選択に葛藤しているそうです。中国の民族統合政策の影響で、継承語である朝鮮語能力が低下する傾向もあるとのことでした。日本でも、日本社会からの孤立を防ぐために外国人への日本語教育が優先されることがあります。しかし、継承語は大切な要素であり、完璧に話せなくても「少し分かる」こと自体が民族的アイデンティティを感じるきっかけになると報告されていました。


8/15 午後

午後は「トランスランゲージング」についての講演とパネルディスカッションでした。

「トランスランゲージング」とは、複数の言語を自由に行き来しながら学びを深める教育方法で、日本でも少しずつ取り入れられつつあるそうです。かつては学校で外国語の使用が制限される場面もありましたが、今は多言語環境を活かした教育の事例が増えてきているとのことでした。


8/15 夜

ガルシア博士 基調講演

トランスランゲージング教育論の提唱者として世界的に知られるオフェリア・ガルシア博士による基調講演を拝聴しました。時差の関係で、日本時間の夜9時からという時間帯での開催でしたが、第一人者から直接お話を聞ける貴重な機会でした。

博士はご自身の生い立ちや研究の原点にも触れられました。家庭ではスペイン語、社会では英語を使いながら育った経験から、「第一言語」と「第二言語」に分ける従来の考え方に違和感を抱いたそうです。言語は単に区別して使うものではなく、日常の中で複雑に交差しながら用いられるものであり、感情と知性が結びついた sentipensar(感じる+考える)という概念を紹介されました。

さらに博士は、言語は箱のように固定されたものではなく、人との関係性や経験の中で編み上げられるものだと強調。トランスランゲージは国や地域によって形が異なり、教育の現場では教師がすべての言語を理解する必要はなく、家族・友人・ツールなど多様な資源を活用する方法があると述べられました。


8/16

二日目は興味のあるいくつかの発表を聴講しました。

日本在住の中国語話者に対する継承語能力の調査や、日本人多言語学習者における自己効力感に関する発表は特に興味深い内容でした。


二日間にわたって開催されたMHB2025研究大会を通じて、多くの発表から新しい視点や学びを得ることができ、大変充実した時間となりました。最後に、素晴らしいお話をしてくださった発表者の皆様、そして運営スタッフの皆様に感謝いたします。

今後、MHB分野の研究がますます広がっていくことを楽しみにしています。

NPO法人名古屋外国人共生支援協会

Nagoya Foreigners Symbiotic Support Association 共に生きる社会を